† of Thousand~千の定義
「なにがあったのか教えな。この騒ぎはなに?」

すなわち、『草薙仁』として行動すると。

長沢は私を気遣いながら、そ、と立ち上がった。

依然添えられている彼の手に従い、私も立ち上がる。

頭の後ろ、首の付け根近くが鈍く重い。定義を取り戻しても、意識の根底が正常を保てないのか、不本意ながら長沢へ寄りかかる。

「仁、無茶は……」

「してない」

思わぬとこらで長沢のたくましさを感じることになったのは、足元がおぼつかないから。

恐らく落ちた時の衝撃がまだ残り、一時的に体が鈍ったのだろう。長いこと正座をしたように。

まったくもって、植え込みで寝るものじゃない。

男としてか彼氏としてか、単純な人としての心配か、長沢は私を上からしたまで眺める。

その眼差しを、私は鋭く見返してやった。

「なにがあってるの?」

見つめ、見つめ、問いを改める。

するとようやく、

「不審火の騒ぎが、起こってるんだ」

現状を話し始めたのだった。
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