† of Thousand~千の定義
管理人の通報でやってきた警察は、このアパートから不審火の連鎖が始まっていると見たらしい。

間違ってはいないが……おかげで管理人は無論、住人の私も軽い事情聴取を先ほど受けた。

もっとも、私に関しては一晩植え込みに倒れていたという事実もあったせいか、他者よりも簡単な聴取だけですんだ。

不審火騒動をその規模から『事件』と定義するならば、私はほぼ間違いなく『事件』の中枢に関わっている。

が、あっさりと解放されたのは、長沢の救いもあってこそだ。

そもそも長沢は、この騒動に万が一私が巻き込まれていないか心配で、わざわざ大学をサボタージュ……もとい自主休講にして、駆けつけたらしいのだ。

まったくもって、嬉しいことをやってくれるじゃないか。

その長沢は今や、念願だったろう私の城へ侵入を果たしている。

アパートの二階、一番左の部屋――屋根の一部が焼け焦げているほぼ真下に当たる場所だと、彼は気付いているのだろうか?
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