† of Thousand~千の定義
屋根の損壊は、騒ぎに聞くほどひどくはない。

部屋からではどうなっているかわからないし、穴が開いているわけでもない。

もっとも、雨が降ればおそらく以上の確率で雨漏りするだろうが……昨日のラジオ予報が外れていることは、不幸中の幸いだった。

ある程度の話を聞いた私は、

「そうか、わかった。ありがとう。それじゃ長沢、お別れだ」

はっきりと、突きつけた。

「は……? なに言ってんだ、仁……?」

と、彼の表情が笑みなのか呆れなのか、あまりに微妙なものに染まる。

当然だ。

私が突きつけたのは、再会を夢見られるような別れの言葉ではない。

永遠の離別を前提にした言葉なのだ。

そのニュアンスにすばやく気付いた長沢は、さすが私なんかの彼氏をやっているだけのことはあるが、

「お別れは、お別れだ」

私は容赦もなければ、未練をまとう気も……まとう気も……まあ、まったくもって、露ほどもないのである。
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