† of Thousand~千の定義
「仁、ふざけるなよ。これから大学、一緒行くぞ?」

時刻はまだ午前の範疇だ。

長沢にしてみれば、私と一緒にこのまま大学へ向かうつもりだったのだろう。

しかし私は、

「悪い。無理だよ。私はお前と、もう付き合えない」

「なんで!」

「なんででもよっ!!」

彼の『彼女』という定義を、一方的に破棄していた。

壊れたのはおそらく……一ツ橋と出逢った時点で。

この四年間に培った魔術知識、世間体、あらゆるものが崩落したのだ。

それはしかし、一ツ橋のせいではなく、キマイラのせいでもなく、

「なんでだよ……なんでなんだよ仁……」

「悪い。でも言えない」

「っ……」

長沢武男のせいでも、ない。

すべては私の力不足が招いたことであり、『罪』の定義がより色濃くなってしまったことへの、けじめなのだ。
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