† of Thousand~千の定義




天涯孤独という言葉の響きが、どことなくカッコよく聞こえる。

が、響きがカッコいいだけであって、その生活は至極わびしく、さびしいものだ。

そんなさびしさがあったから、たぶん私は長沢と付き合うことをよしとしたのだろう。

「ここまででいいぞ」

言って、私は長沢に振り返った。

背後には、築五十年を数える木造アパート。

台風のたび、にぎゃあにぎゃあと年老いた猫のように泣くボロ屋敷……もとい私の住まいだ。

「ここまでって……部屋まで送ってやるよ」

と、長沢はアパートを見上げた。彼の視線は、ふわふわとしている。私の部屋を、彼は知らないのだ。

私は彼の申し出を拒絶する。

「いや、ここまででいい。送ってくれてありがとう。今日はお別れだ」

長沢は人をイラつかせるスペシャリストだが、嫌いではない。

むしろ好きだから付き合っている。
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