† of Thousand~千の定義
しかしだ。私達は今のところ、恋人らしい関係はまだ持ったことがない。
実は互いに、まだ手のぬくもり程度しか知らないのだ。
「でも、ここまで来たんだし、最後までさ……」
私の家……すなわち『彼女』の家を目前にして、長沢もやはり男だ、『今日こそは』という目論見があったのかもしれない。
長沢に、欲情するなとは言わない。
しかしはっきりと、
「どのみち部屋には入れてやらないから、ここまでにしときな」
彼が私のテリトリーへ入ることは、言葉でも拒絶する。
長沢の落胆が、メガネの奥で曇った瞳に、少し窺えた。
彼にしてみれば、私はガードの堅い女だろう。
雑誌売り場で焦らしても、ヴァンホーテンのココアで釣っても、男を部屋に上げない女。
それが一年も続いているのだ。私の硬度も並みでないと思われているに違いない。
もっとも……そんな私の『彼氏』であり続ける長沢も、ずいぶん頑固な頭をしているとは思う。
実は互いに、まだ手のぬくもり程度しか知らないのだ。
「でも、ここまで来たんだし、最後までさ……」
私の家……すなわち『彼女』の家を目前にして、長沢もやはり男だ、『今日こそは』という目論見があったのかもしれない。
長沢に、欲情するなとは言わない。
しかしはっきりと、
「どのみち部屋には入れてやらないから、ここまでにしときな」
彼が私のテリトリーへ入ることは、言葉でも拒絶する。
長沢の落胆が、メガネの奥で曇った瞳に、少し窺えた。
彼にしてみれば、私はガードの堅い女だろう。
雑誌売り場で焦らしても、ヴァンホーテンのココアで釣っても、男を部屋に上げない女。
それが一年も続いているのだ。私の硬度も並みでないと思われているに違いない。
もっとも……そんな私の『彼氏』であり続ける長沢も、ずいぶん頑固な頭をしているとは思う。