† of Thousand~千の定義
「今日も、どうして入れてくれないかは教えないんだろ?」

諦めの色も強く、長沢が確認してくる。

私はこくりと頷いた。

「わかってるじゃない。そう、どうして入室を許可しないかは秘密だ」

「……飽きないねぇ」

「何度も聞くお前も、よく飽きないわねぇ」

はたから見れば、別れを惜しむ恋人同士に見えるかもしれないが……

実はテリトリー侵略をかけたやり取りなどと、だれが気付こうか。

いつまでも、こんなところで立っていたくはない。

日は暮れ始めている時刻なのに、世界はどこかほの青い黒だ。

雨が降るかもしれない。

だから、私はいつも、長沢を追い返す。

「長沢、私はお前のこと、ちゃんと好きだ。それはたしかだから、もう帰れ」
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