† of Thousand~千の定義
いったいなんだ――と口にしたつもりが、私の声は出なかった。

意識のみの浮遊。

つまり、今の私に体はない。

口もなければ、発音することもできない。

「私は、以前からお前を見てきた。ロサエル・セクンドゥム・ソフィア」

その名前を、なぜ知っている?

しかし声は、恐らく私の意識をそのまま読み取っているのだろう――滞りなく、火の玉との会話が成立する。ジジ。

「言っただろう。私はお前を見てきた。そして、『罪』の定義を自らに課し行動してきたお前が、こうして『狭間』に再び訪れる時を、待っていた」

『狭間』……彼が定義していた。

それは、非属に分類される、『存在しない空間』だと。

誰のものでもあり、誰のものでもなく、誰もが訪れることができ、しかし誰も訪れようとしない、異空間だと。

ここは……狭間なのか?

「そう、ここは『狭間』だ。誰もが訪れることができる、言わば邂逅の世界」

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