† of Thousand~千の定義
爆音爆風、雨滴、降りかかるすべての事象を、しかし私は屹立の姿勢で見ていた。

五十メートル先――たてがみを赤々と揺らす魔獣が、声を絞り出した。

「女……貴様、今の力はなんだ? いったいいつ、その力を――魔法の契約を結んだ!!」

さすがに、魔族だ。

私が、先ほどまでの私でないことを、認知している。

私の中で燃え盛る、新たな能力に、気付いている。

右手を前へ突き出しつつ、答えた。

「私というものを構築する定義がひとつ増えた、それだけのことだ」

「……」

「この私、『魔術師』草薙仁、その存在に――」

突き出した先に、炎が灯る。

「『魔法使い』の定義を、加える。――本当に、ただそれだけのことだ」

「……小賢しい……どこまでも、小賢しい……っ!」

臨戦を、私も魔獣も整える。
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