真夜中の猫
キャットフード
亮は家を出て、しばらく大学時代の友人の部屋に居候させてもらう事になった。そこは3LDKのアパートで、もう1人40歳くらいのおじさんとルームシェアしていた。
車もないので友達に乗せてもらったり、会社の車を使ったりいろいろと不便だったが、寛美のところに戻るつもりはなかった。
亮は勝手に携帯を見て被害者になり切っていた寛美にうんざりしていた。今までも寛美の気分屋なところについていけないと思うことがあった。特に仕事がたてこんでいる時に、そんなことに構っている余裕はなかった。
2月3月は不動産業はかなり忙しかった。浮気を疑われるような時間的余裕はなかった。自分からしたプロポーズもいつか落ち着いたらしようくらいの気持ちで、どんどん準備を始めようとする寛美についていけなかった。
潮時だったのかな。
気持ちに区切りをつけ仕事に邁進した。
数日後、夜に亮からのメールが入った。
【 荷物を取りにいってもいいですか?】
仕事帰りに来るのか。寛美にはなんの感情もおきなかった。
【 いますけど、どうぞ。】
寛美はそっと窓の外をみた。
軽の可愛い車が入り、助手席から亮がおりてきた。
あの女だ!寛美は一気に感情が高まり怒りがこみ上げてきた。
鍵の空く音がすると亮が入ってきて、何も話さずに淡々と荷物をまとめていった。昼間に少しづつ運び出していたようでもう荷物は残り少なかった。さやかは久しぶりに来た亮を少し警戒し、隣の部屋へ隠れていた。
荷物をまとめた亮が話しかけてきた。
「さやかは?」
「向こうに隠れてる。」
「そっか。」亮は大きくため息をついた。
「じゃあ。」と荷物を持ってすぐに亮は車に戻って行った。
久しぶりにあった亮は少し痩せて見えた。寛美はさっきまでの怒りが消えて足の力が抜け、その場に座り込んだ。静かになったのを見計らって、さやかが出てきた。いつものように体を寛美にすり寄せ、膝の上でまるまった。その綺麗な毛並に涙が落ちた。寛美は泣いていた。どうしてこんな風になってしまったんだろう、と悔やんだ。そしてあらためて想っていた。亮が好きだ。自分にはかけがえのない人なんだと。一度は別れたが、亮の気持ちを取り戻すことができた。でも、今度は自分がその手を振り払ってしまった。そして、亮は前へ進み寛美はその場にうずくまっていた。亮のいないこの部屋はとても広すぎた。
次の休みの日にまた荷物を取りにくるとメールがはいった。
寛美もその日は休みで家にいた。亮は休みでも忙しく来たのはもう夕方近くだった。
寛美はさやかを抱いて、亮の様子をみていた。亮はやっぱり痩せて見えた。
「仕事忙しいの?」
「あ、うん。」
「ごはんとかちゃんと食べてる?」
「まあ、わりと。」
寛美は大きくため息をついた。疲れている亮をみていられなかった。
「なんか食べる?疲れてるんなら泊まっていってもいいよ。私は向こうで寝るからゆっくり休んで。」
亮は驚いた。確かに疲れていたし、お腹も空いていた。これが最後と思い、寛美のいう通りにした。
寛美は一人分の食事を作り、その間、亮はさやかと遊んでいた。
ちよっと前まで当たり前の光景だった。
食事を終え、シャワーをすませると、亮はベッドで休み寛美はさやかとこたつに入った。
部屋の電気は全部消し、さやかは気持ち良さそうに眠っていた。
寛美は眠れなかった。
何時間が経っただろう。今が夜の何時なのか時間の感覚がなくなっていた。真夜中なんだろう。カーテンごしに月明かりがみえた。
ふと寛美は起き上がった。さやかはピクリともしないで眠っていた。
寛美は寝室の前に来て、しばらくしてそっと扉を開けた。
規則正しい寝息が聞こえた。
ゆっくりベッドに近づいて腰をおろした。
そして、眠っている亮にキスをした。
唇はかすかに震えていた。頬には涙が伝った。
亮は目が覚めたが寛美の涙で全てを感じ取り、寛美の頭を撫でた。
2人は何も話さなかった。ただ抱きしめ合い、今までにないくらい激しく愛し合った。
寛美はずっと泣いていた。愛し合った後も2人は朝まで裸のまま眠った。
次の日、寛美が仕事から帰っとくるとポストの中に鍵が入っていた。部屋の中には何一つ亮のものがなくなっていた。
ただ、さやかのお皿にキャットフードがつがれていた。
車もないので友達に乗せてもらったり、会社の車を使ったりいろいろと不便だったが、寛美のところに戻るつもりはなかった。
亮は勝手に携帯を見て被害者になり切っていた寛美にうんざりしていた。今までも寛美の気分屋なところについていけないと思うことがあった。特に仕事がたてこんでいる時に、そんなことに構っている余裕はなかった。
2月3月は不動産業はかなり忙しかった。浮気を疑われるような時間的余裕はなかった。自分からしたプロポーズもいつか落ち着いたらしようくらいの気持ちで、どんどん準備を始めようとする寛美についていけなかった。
潮時だったのかな。
気持ちに区切りをつけ仕事に邁進した。
数日後、夜に亮からのメールが入った。
【 荷物を取りにいってもいいですか?】
仕事帰りに来るのか。寛美にはなんの感情もおきなかった。
【 いますけど、どうぞ。】
寛美はそっと窓の外をみた。
軽の可愛い車が入り、助手席から亮がおりてきた。
あの女だ!寛美は一気に感情が高まり怒りがこみ上げてきた。
鍵の空く音がすると亮が入ってきて、何も話さずに淡々と荷物をまとめていった。昼間に少しづつ運び出していたようでもう荷物は残り少なかった。さやかは久しぶりに来た亮を少し警戒し、隣の部屋へ隠れていた。
荷物をまとめた亮が話しかけてきた。
「さやかは?」
「向こうに隠れてる。」
「そっか。」亮は大きくため息をついた。
「じゃあ。」と荷物を持ってすぐに亮は車に戻って行った。
久しぶりにあった亮は少し痩せて見えた。寛美はさっきまでの怒りが消えて足の力が抜け、その場に座り込んだ。静かになったのを見計らって、さやかが出てきた。いつものように体を寛美にすり寄せ、膝の上でまるまった。その綺麗な毛並に涙が落ちた。寛美は泣いていた。どうしてこんな風になってしまったんだろう、と悔やんだ。そしてあらためて想っていた。亮が好きだ。自分にはかけがえのない人なんだと。一度は別れたが、亮の気持ちを取り戻すことができた。でも、今度は自分がその手を振り払ってしまった。そして、亮は前へ進み寛美はその場にうずくまっていた。亮のいないこの部屋はとても広すぎた。
次の休みの日にまた荷物を取りにくるとメールがはいった。
寛美もその日は休みで家にいた。亮は休みでも忙しく来たのはもう夕方近くだった。
寛美はさやかを抱いて、亮の様子をみていた。亮はやっぱり痩せて見えた。
「仕事忙しいの?」
「あ、うん。」
「ごはんとかちゃんと食べてる?」
「まあ、わりと。」
寛美は大きくため息をついた。疲れている亮をみていられなかった。
「なんか食べる?疲れてるんなら泊まっていってもいいよ。私は向こうで寝るからゆっくり休んで。」
亮は驚いた。確かに疲れていたし、お腹も空いていた。これが最後と思い、寛美のいう通りにした。
寛美は一人分の食事を作り、その間、亮はさやかと遊んでいた。
ちよっと前まで当たり前の光景だった。
食事を終え、シャワーをすませると、亮はベッドで休み寛美はさやかとこたつに入った。
部屋の電気は全部消し、さやかは気持ち良さそうに眠っていた。
寛美は眠れなかった。
何時間が経っただろう。今が夜の何時なのか時間の感覚がなくなっていた。真夜中なんだろう。カーテンごしに月明かりがみえた。
ふと寛美は起き上がった。さやかはピクリともしないで眠っていた。
寛美は寝室の前に来て、しばらくしてそっと扉を開けた。
規則正しい寝息が聞こえた。
ゆっくりベッドに近づいて腰をおろした。
そして、眠っている亮にキスをした。
唇はかすかに震えていた。頬には涙が伝った。
亮は目が覚めたが寛美の涙で全てを感じ取り、寛美の頭を撫でた。
2人は何も話さなかった。ただ抱きしめ合い、今までにないくらい激しく愛し合った。
寛美はずっと泣いていた。愛し合った後も2人は朝まで裸のまま眠った。
次の日、寛美が仕事から帰っとくるとポストの中に鍵が入っていた。部屋の中には何一つ亮のものがなくなっていた。
ただ、さやかのお皿にキャットフードがつがれていた。