あなたがいたから、幸せでした。

私の手がつかまれた。


「ねえ、富山。

人ってなんて弱いんだろうね。」


私の手をつかんだまま、なおも言う彼に唖然とする。


キュウッ


手に込められた力が、

とても強くなった。


「痛っ!

離し、てっ」


やめて、痛い。

彼は私を見ていった。


「痛いって感じるのは、富山が生きてる証拠じゃん。

生きるのをやめるのは、まだ早いんだよ。」


スウッと痛みが和らいで、

解放感にあふれる。



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