あなたがいたから、幸せでした。
私は走った。
彼女に遅れを取るまいと。
しっかりとつながれた手は、どこか心地良くて。
握りつぶすような怖い感じでもなく、
ただただ優しく握ってくれた。
それでもやっぱり、ぎゅぅっと、強く。
痛くはない。
怖くもない。
こんな気持ちになれるのは、拓馬だけだと思ってたのに。
嬉しくて。
涙が出そうになる。
でもね、まだなんだよ。
亜美さん、あなたは本当に私に悪い事はしないの?
それとも。
あれは嘘なの?
優しい言葉で私を
惑わせてるだけなの?
そうしてずっと走っていると、
いきなり
「着いたわよ。」
という声がした。