あなたがいたから、幸せでした。


それじゃあ!


と彼の顔がほころぶ。


『えぇ、婚約は無しにしましょう』


私達の間には、強い何かがあった。

それが〝愛〟だとは言えないけれど、

確かに私は明が大好きなんだ。

いや、大好きだったんだ。


『で』


と私が切り出して、

明はきょとんとする。


『明、付き合ってんの~?』


こらこら~、というような雰囲気で聞いてみた。


『ああ、付き合ってはいないよ。

ただ、その子とはとっても仲がいいんだ。』


へぇ~、と聞いて驚く。


明はモテるのに、何で付き合っていないんだろう。


私の頭に数々の疑問が浮かぶ。


『何で付き合わないの?』


そう言ってやると、明は気まずそうな顔をした。


『その子、違う奴が好きなんだ。

しかも、俺の親友。最悪だろ?

精神的にも結構いっぱいいっぱいでさ。

告白なんて、できるわけねぇじゃんか・・・』



< 272 / 430 >

この作品をシェア

pagetop