あなたがいたから、幸せでした。



『人!?』


そうやって叫んだ姿の見えない〝彼〟は、もう1度私に向かって叫んだ。


『あのー!今どこにいますか!?

あなたの姿、見えませんよっ!?』


やっぱり彼も、私と同じ闇に?


『真っ暗で、私も見えないの。

あなたの姿!ここがどこかも分からないの!』


別段声を張り上げたかったわけじゃない。

けど、人間は不安になるばかりで、

何もできなくなる。

この声は張り上げなくてもきっと彼に届いていた。

えぇ、そんな事分かってるわ。

だけど。

誰かに気付いてもらえてるか心配で、

声を張り上げてしまうんだ。







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