せいあ、大海を知る
不思議でありえない出来事に、1人の私はちゃんと知りたい言う。そして、もう1人の私はこれ以上この話をしてはいけないと言う。2人の自分が頭の中で言い合いをしている。


「……ごめん、疲れちゃってボーっとしていたら、自分でも意味の分からないこと言ってたみたい」


直感的に、これが正解の行動だと思った。


なんだろう、私1人だけ違う世界に来たような、一人だけ取り残されてしまったような感覚だ。


「そう?さ、少し休みましょうか」


隣からそっと腰に手を添えられて、ゆっくりと扉の方へと押された。逆らうことはもちろんせずに、誘導されるままに店の中へと足を進めた。





――カラン、カラン


扉を開けると、涼しげな音とともに、ひんやりとした冷たい空気が流れてくる。


「いらっしゃいませー。何名様でしょうか?」


「2人です」


「ご案内いたします」


店員とばあちゃんのやりとりを、一歩身を引いた状態でぼんやりと眺めた。ざわざわとしているはずの店内の音が、どこか遠くから聞こえてくるような感覚に襲われる。まるで私だけここに存在していないような感覚。


ふと店の外を振り向くと、いつもと変わらない光景が広がるだけだった。


じいちゃんが居たはずの光景は消えてしまった。

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