せいあ、大海を知る
ぽつり、ぽつりと私も今までのことを話すことにした。桂馬も話してくれたから。


まずは先ほど夢を見て、生々しいほどに思い出したじいちゃんのこと。そして、ばあちゃんの事。


思い出すと、胸が苦しくなる。なんで大事な人たちがいなくなったのに、今まで平気な顔して暮らしてこれたんだって。自分は薄情な人間だって。


話をしながらどんどんと辛くなってきた頃、それを察してくれた桂馬は私の正面から隣へと移動してきて、ゆっくりと頭を撫でてくれていた。


「ばあちゃんもお母さんもある日突然消えた。まずはばあちゃんが消えて、両親と私の3人暮らしになったんだ。桂馬の所と一緒で、出かけたまま帰って来なかった。私にはどうしようもなくて、知らないふりをして平気な顔して生活し続けたんだよね」


私の話を聞きながら「千夏も辛かったよな」って、気持ちに寄り添ってくれた。だから、1番辛かったお母さんが居なくなったときの記憶も話すことにした。


当時1番大事な人だったにも関わらず誰にも言えなかった分、消化するのに1番時間がかかった出来事だった。未だに消化できているとは断言出来ないけれど。





「……今まで気になってたんだけどさ、やっぱりお母さんも?」


そうか、そうだよね。人が消えることを知っている桂馬には父子家庭な私の家を見れば簡単に想像がつくはず。

今までは疑問に思う人がいなかったし、お母さんは存在すら消えてしまっているのに話をするのも可笑しいから特に触れたりはしなかった。


彼の質問に、こくんと頷いた。


「桂馬に隠せるわけないね。そうだよ、お母さんも消えた。あの日から、私の家は父子家庭になったんだよね」


じいちゃんとばあちゃんのいない生活にやっと慣れて、人がいなくなることにも目を潰れるようになった頃だった。
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