せいあ、大海を知る
「今日さ、久しぶりに家に来ないか?」


「……そうだね、たまには行こうかな。奏太君にも久しぶりに会いたいし」


サボってしまった5限目。時間はあるからとのんびりソファに並んで座って、話をしていた。


奏太君は桂馬の歳の離れた弟で、私のことも慕ってくれている。桂馬の家に遊びに行くと必ず奏太君とも遊ぶ。桂馬は家族思いで、私たちと一緒に遊びたがる奏太君を邪険に扱ったりは絶対にしない。


「そうしてやって。千夏と遊びたいって最近うるさいくらいだから」


「そっか、それは会いに行かなくちゃ」


可愛い奏太君を思い浮かべると自然と頬が緩んできた。


今日は独りになりたくない気分だったから、こういう提案はありがたい。桂馬とそして奏太君と過ごせば、嫌な事ばかり考えなくて済みそう。


家に帰ってもお父さんが帰って来るまでは一人ぼっちになってしまうから。それは避けたい気分なんだ。





――キンコンカンコーン


今日の放課後の約束をし終えた頃、廊下の方から5限目の終わりを告げるチャイムが聞こえた。今気づいたけど、生徒会室にはチャイムが鳴らないらしい。


だからさっきは気づかなかったのかと納得した。


「そろそろ戻ろうか……」


桂馬もチャイムが聞こえたらしく、私から声を掛ける前に、桂馬が動いていた。


「そうしよっか」


ソファに深く沈めていた腰をあげた。荷物を抱えて、廊下とこの部屋を隔てていた扉へと向かった。


――バタン


音を立ててしまる扉に背を向けて、2人並んで生徒会室を後にする。
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