せいあ、大海を知る
2人並んで通い慣れた道を歩く。


制服姿の学生を見かけることがないのは、いつもと大きく違うけれど。代わりに普段見かけない私服姿の子どもや部活帰りらしき高校生ばかりだ。


「桂馬は今日の夕飯どうするの?」


今日は一人だといていたことを思い出し、気になって聞いてみた。桂馬がご飯を作るって話は聞いたことがないから、どうするつもりなのだろうと疑問に思った。


「んー、適当にインスタントか何かで済ませるよ。どうせ今日1日のことだしな」


何があったかな、と考えるように付け加えている。インスタントを食べるくらいなら、


「簡単でいいなら私が作ろうか?昼ご飯コンビニだったし、経済的にも健康的にもそっちの方が良くない?」


インスタントもコンビニご飯もおいしいけど、続くのはちょっといただけない。上手いとは言えなくても、多少なら料理位できる。だってお父さんとの2人暮らしも長くなってきたから、必然的に料理をする機会もお母さんがいたころより増えている。


私の中ではすでに作ることは決定事項で、何作ろうかなんて考えながら進んでいると、隣に居たはずの桂馬がいないことに気が付いた。


大きく心臓がドキリと跳ねて、恐る恐る後ろを振り向いた。さーっと血の気が引いていくのを感じた。


……よかった。桂馬はちゃんとそこに居た。ただ驚いたような顔をして、立ち止まってしまっていて、どうしたのかと眉を顰めた。


「……桂馬?」


静止したまま動かないことに不安を感じ、小さく名前を呼んだ。


その私の声に反応し、ようやくスタスタと再び歩き始め、私の隣まで歩み寄りまた足を止める。


「初めての手料理に動揺しただけ。作ってくれるのは大歓迎だから、急いで帰ろう」


さっきまで足を止めていたのは自分のくせに、私を置いていく勢いで歩き始めてしまった。明らかに速度が上がっていることに可笑しくなった。


急いでも急がなくても変わらないと思うんだけどな。普段見れない、子供っぽい行動に、なんだかうれしくなった。
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