せいあ、大海を知る
少し早起きをした私は、今日も簡単な朝ごはんを作る。


パッと食パンをトーストして、卵を焼いて、野菜をお皿に盛りつけて、これでいいかと一人で食べ始めた。


お父さんは少し遅い出勤だと言っていたから、行儀悪くテレビを眺めながらのんびりと朝を過ごした。




お父さんを送り出して、ホッと一息ついた頃に、桂馬からメールが来ていた。


【今から向かう】


短い文章だけど、彼が来てくれるという嬉しさの方が勝っていて、うきうきと心は弾んでしまっている。


会っていないのはたった一日だけど、早く会いたくてたまらない。それに、今日は勝家さんからの連絡についても話さなきゃいけない。


もしかしたら、桂馬と過ごしている間に勝家さんから新たな情報だってあるかもしれない。こういう時は一人で待つよりも2人がいい。桂馬と2人が。


底知れぬ不安に襲われることがあるから誰かと一緒というのは心強い。相手が桂馬だから尚更に。


「もうすぐかな」


考え事をしていると、心はなかなか静まらなくて、早く時間が経ってほしいと、そわそわ時計を眺めていた。思考もあちこちに飛び、間に桂馬の事を思い出して、考え事は纏まらないし、何を考えていたのかさえ途中で忘れてしまう。


自分の落ち着きの無さが可笑しくなって、私以外に誰もいない部屋で声を小さく漏らして笑ってしまった。


……小さな子どもじゃないんだし、もう少し落ち着け私。


ゆっくりと何度も言い聞かせた。
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