せいあ、大海を知る
一人で桂馬を待っている間は、実際の時間としてはそんなに経っていないはずだけど、私にとってはすごく長い時間だった。


何度時計を確認しても思うように経過してくれなかった。見つめてみたりもしたけれど、ゆっくりゆっくりと進む時間にもどかしさを覚えた。


どうして、過ぎてほしい時間というのは、こうもゆっくりなんだろうか。こういうとき、いつも考えてしまう。考えたって私の頭では答えが出るわけないのに。







――ピンポーン


そわそわとしているうちに、やっと着いてくれたらしい。急いで出迎えようと、バタバタと足音を鳴らしながら足早に玄関へ向かった。


――ガチャ


扉の向こうに居るのが誰なのかもろくに確認せず、勢いよく玄関の扉を開くと、待ち望んでいた人が、待ち望んだ表情で立っていた。


「いらっしゃい」


つい緩んでしまう頬を隠しもせずに、笑って出向かえた。すると私を同じように、ゆっくりと笑いかけてくれた。


勝家さんの登場と、新たな進展がありそうな連絡で、急激に変わっていく日常を嫌でも感じて、不安に蝕まれていく私の心強い味方が現れてくれた。


桂馬と一緒なら、大丈夫。なぜかは分からないけとなんとなくそんな気がする。
< 67 / 73 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop