お金より体力が大事?
2人は百貨店内の試食を楽しんだり、物産展のお弁当を食べたりして楽しんだ。

「会場を出たのはいいんですけど、けっきょく百貨店なんですね。」


「じつはね・・・食べたかったんだ。
ここにきた目的はこっちといってもいい。」


「あははっ。なるほど。
外のお店はいつでも行けますもんね。
期間限定を楽しむのは百貨店ならでわかもしれませんものね。」


「だろう?そういうのもあって動きやすい格好してきたんだ。
なのに、いろんな人に捕まっちゃってね。」


「高岡さんってそんなに有名人なんですか?」


「あっ・・・ま、まぁね。業界の人の間だけね。」


「へぇ、大変なんですね。」



「いや、まぁ・・・そうだ、あの原稿用紙が気に入ったんなら君の家に好きなだけ送ってあげるよ。
どれくらいほしい?1000?2000?」


「そ、そんなに・・・ダメですよ。売り物なんでしょう?
ちゃんとお金を出して買いますから・・・。」



「けっこうきちんとさんなんだね。
たぶん、売れ残るからと思っていったんだけど・・・まぁいいや、じゃあ1揃えだけ送る。
それならいいかな。」


「でも・・・。」


「わかった正直にいうよ。
じつは俺、今ちょっとだけスランプに落ち込んでる。

気晴らしにいろいろ歩きたい。
できれば君につきあってもらいたい。

君とまわればけっこう笑えるなと思ってさ・・・。
変なところへは行かないし、何もうしろめたいことも考えてない。
だから・・・今夜だけ付き合ってほしい。」


「わかったわ。
私もデートの相手はいらないんだけど、スランプというのはわかるわ。
お酒抜きならってことでもいい?」


「もちろん。学生さん相手にそういうのは押し付けない主義なんだ。」


「じゃあ、少しだけね。」


百貨店を出て、ショッピング街をうろついて、小さな画廊をのぞいて、甘党のお店で休憩して、どちらかというとデートというより、女友達と出歩いている感覚だった。


「面白くない?」


「何が?」


「画廊なんていっても興味ないかと思って。」


「そんなことないよ。絵とか展示物を見るのは好きだから。」


「よかった。そういえば映画館とか行かなかったね。」


「ああ、映画は余程同じ趣味でないといっしょにいる相手が不愉快になるだろ?
俺の趣味は相手がほとんど退屈になってしまうから・・・言わないことにしてる。」


「デート慣れしてるのね。」


「いや・・・俺はふだん誰も誘わないけどね・・・。
勝手についてくるコはけっこういるみたい。」


「なるほど・・・そういうこと。」
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