お金より体力が大事?
そこまで話をした幸鷹は急に顔を赤らめて、うつむいたが、すぐにリハビリの準備をするといって、部屋を出ていった。


「幸鷹さん!!あのっ。」



幸鷹は自然と顔がにやけてくるのを感じていた。


「だめだ・・・自分の望みどおりなのに、あんなに素直に返されたら・・・こんなにはずかしくなってしまった。

それに、気持ちは届いているのに、どうしていいかわからないとか怖いといわれると・・・どうすればいいんだ?
よわったな・・・」



2人はお互いを意識しているが踏み込めないまま、小花のリハビリスケジュールが進んでいき、気がつけば小花は完治して、幸鷹はもとの職場へともどることになった。

しかし、小花の住まいはペンネーム春日丘良斗こと高岡由樹に知られてしまっていたために引っ越さねばならなかった。



「なぁ・・・もし、もし君が嫌ではなかったら、いっしょに住まないか?」


「それはダメ。スタッフもたくさん出入りするし・・・。
事務所と兼用できるところがいいから。

同棲なんてしたくないわ。
私、そういうの嫌いだから・・・。」


「あ・・・ごめん。俺は心配だから・・・その・・・。」


「こちらこそごめんなさい。
私のために言ってくださったのに。

だけど、憧れは憧れのままの方がいいと思うし、私は外に出てしまえば根暗な物書きで目立たない大学生だからそっとしておいてほしいの。」


「そっか・・・わかったよ。
でも、もし困ったことがあったらすぐに言ってこいよ。
もう一度いっておくが、俺は飾っておくだけのやつにはなりたくないんだ。」


「ありがとう・・・その言葉だけでとってもうれしいです。
じゃ、いろいろと決まったらまた連絡しますね。」


「ああ、気をつけろよ。」



それからの小花は新しい住まいと事務所を探し、その間も執筆活動を続け、連続2作も作品を展開し、書店の入り口にでかでかと新作が並ぶほどの勢いをみせた。

女子高生からOLまで女性にすごく人気が出て、出版社も小花にまとまった休みをとるように言うほどの人気ぶりであった。



「ちっ・・・軟禁から逃れた後にこんなことって・・・ほんとに皮肉なものだなぁ。」


高岡由樹は苦笑いをした。

「やはり、物書きっていうのは苦しくなった方が実力を発揮するってことなのかもな。
男のところで過ごしているとはきいたが・・・こんなに書いていたとはな。

しかし、この小説に出てくるヒーロー君はどちらも似たタイプだよな・・・。
筋肉質で、頼りがいがある。
そして片方は明るくて、元気で優しい。
もう片方はクールなんだが、元気があってじつは優しいって感じか。

そういう男がいるってことだな。」


< 20 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop