お金より体力が大事?
小花は秘書の仲元佑子に大学の送迎を頼んでいた。

そして、今日も仲元が小花を迎えにきて、大学を出た途端に2人の男性に声をかけられた。


「すみません、僕たち最近引っ越してきたばかりで、この辺の地理に詳しくないんです。
この住所の家を知りませんか?」


「あ、私たちも大学の近くはあまり詳しくないので、交番にいってきいた方が早いのではないかと思います。」


「じゃ、すみませんが交番までお連れいただくことはできませんか?」


スーツ姿に眼鏡をかけた男性が小花に話しかけてきて、小花はにっこりと交番までいっしょにいくことにした。

話をしてみると、スーツに眼鏡のいかにも中堅ビジネスマンっぽい男性は2人のうちの兄で真崎祐司(まさきゆうじ)と言い、もうひとりのジャケットにジーンズという弟は真崎達哉(まさきたつや)と名乗った。

兄の祐司は見たまんまのビジネスマンで広告宣伝の仕事をしているらしく、弟の達哉はブティックを経営しているらしい。


交番まで行くと2人は小花たちにお礼をいって手をふっていた。


「イケメンを拾うとは驚きだったわね。」


「できすぎな気もするわ。」


「いつもながら用心深いわね。小花は。」



「だって・・・。」



「やっぱり、幸鷹さんにはみんな負けるのかしら?」


「そういうわけじゃ・・・。私はそういう世界で生きるのは向いてないもの。」


「そうかしら?あなたは売れない小説家じゃないのよ。
もうベストセラー作家でテレビで俳優だってひいきで引っ張ってもOKな人なのよ。

なのに、どうしてまだ地味な自分を大切にしているのやら・・・。」


「私、べつにそんなハデな世界に出たくて書いているわけじゃないもの。
もともとは食べていけるかもわからなかった。

単なる趣味程度だったんだけど、こっちの方が独り歩きして、お金儲けになってしまった・・・っていうだけなんだよ。

私自身は何も変わったわけじゃないわ。
それを忘れてはダメなの。
それはお母様の遺言でもあるの。」


「遺言?だって事故だったからそんなの・・・」



「あ、結局遺言になってしまったというべきね。
よくね、今の自分に満足しているだけではダメって母がよく言ってたの。

守るだけになってしまったら、そこから前には進めない。
だから何が何でも進まなくっちゃダメって。」


「へえ・・・預言者だったのかしら?」


「さぁ、どうだか。でも、私にとってはそうだと納得することが多いからがんばることに決めたの。」


「でもよ、休暇もらっちゃったわ。
あれほど締切締切ってうるさかった会社が、わざわざチケットまでとって休暇をくれたのよ。
羽をのばすべきよ。」


「そうね。じゃ、行きますか?」
< 21 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop