お金より体力が大事?
その頃、小花は毎日カメラマンの撮ってきた写真へのコメント書きをしていた。


「私にしか書けない感想を書いていく・・・っと。」


(取材はみんな順調だわ。
写真もレポーターもうまくいってる。
テレビ宣伝用のCMもできあがったみたいだし、それが日本で流れるのも時間の問題ね。)


「CMの第一弾が昨日の深夜枠ですけど無事に放映されたそうです。」


「そう、順調にすすんでるじゃない。
山口さんもずっと動きっぱなしで疲れてるんじゃないの?」


「僕はぜんぜん。今度、日本へ帰ったときはウハウハですから。」


「それはわからないわ。
それにこの仕事は小説とかグラビアじゃないんだから・・・ね。」



「でもベストセラー作家 晴波優樹菜がずっと綴っているんですよ。
小説とはまた違う切り口で、それでいて壮大な光景を優しい文章が紹介してるんですから、これも大人気まちがいなしだ。」


「どうかなぁ・・・。
初めての試みだし、私だけが足をひっぱるかもしれないし。」



「だいじょぶですって。僕が保証します。」



「あはははは、保証してくれるんだ。」



「そうです。僕が第一秘書になってがんばってきたんですから大丈夫。」



「そだね。もう2か月目だもんね。」


「ところで先生、今晩は仕事は入っていませんし、僕とディナーでも行きませんか?」


「そうねぇ。そういえば、山口さんの歓迎会ってしてないね。」


「歓迎会してもらえるんなら、おごってもらわないとね。あはは」


「あら・・・ずっとお兄さんにおごったことなんて私、ないけど・・・。」


「またまたぁ~。以前、オリンピック選手のなりそこないの男にかなりの額を調達して、同棲してたってききましたけど。」


「あ・・・あれは本当に困っていたから。
それに私ずっと前は、彼のファンだったしね。
何か、私でも力になれることがあったら・・・って思ったの。」


「へぇ・・・で、会社までつくってあげたんだ。」


「な、何がいいたいの?」


「いえ、すみません。単なる僕の嫉妬です。
決して金銭的なことでうらやんだりしてるんじゃないんです。

僕は・・・先生のところでお世話になる前は、出版社で働いていました。
そんないい大学を出てるわけじゃないし、かなり下っ端な仕事を長くしていたんですけどね。
そんなときに、こんな僕でも衝撃が走るような文章を読んだんです。

ある雑誌が先生の小説を部分的に抜き書きしてる記事だったんですけどね、それを目にしてから僕は本を買いにいきましたよ。
すごく憧れました。素直でまっすぐな感じがしてるのに、ひねりがきいていてね。
どんなおばさんかなって思ってたんです。

まさか・・・こんなかわいいお嬢さんだと思ってなくて。」

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