お金より体力が大事?
それから幸鷹は会社の損害をすべて返済し、辞表を提出し、住まいも引き払って、身1つで小花のところへとやってきたのだった。


「あなたのデスクとお部屋を用意しておいたから。
私の家として使っている下の階の部屋ね。」



「ちょ、ちょっと待ってくれ。下の階って何だ?
君の家に住み込みで働くんじゃ・・・。」



「まさか・・・そんなふしだらな娘になったら天国のパパとママが泣いちゃうし。」



「はぁ?(なんか意外な感じだな。すごくドライなのかと思ったら律儀なところがあるし。)」



「もしかして、なんかいやらしいことを考えていたの?」



「違う!俺は金を貸してもらった手前、何でもしなきゃいけないかと思ってだなぁ・・・。
言われれば食事の支度から掃除、洗濯、運転手、秘書、etc・・・」



「いいのよ。そんなに気を遣わなくて。
そうねぇ、高いとこのものを取ってもらったりするのに呼ぶことはあるかもしれないわ。

ふだんここって女性だけでしょ。
男手って大切ですものね。」



「じゃ、俺は何をすればいいんだ?」



「とりあえずは悪いけど、そこにある原稿を全部読んでほしいのと・・・。
あの・・・。これは・・・。えと・・・。」



「ん?何か悩み事か?」


「あのね・・・じつは・・・私、大学生なんだけど20才なんだけど1回生なの。
大学生になろうとしてたときに作家として忙しくなっちゃって・・・。

でもなんとかがんばって文学部に入って、基礎知識を養おうと思ってたんだけど・・・私じつは、必須科目をみんな落としてしまって・・・。
レポートを書かないといけないの。

でもよくわからなくて・・・先生は普通に物を考えれば簡単っていうんだけど、私は普通が普通じゃないみたいで、1回提出したら返されちゃって、へこんでたの。
普通って何?どういうことなのかわかんない。」



「そうか・・・作家様って国語が得意ってわけじゃないってよく話にきいてたけど、視点が平凡じゃないってことだな。
物事の普通がずれてるっていうか、だから小説やエッセイが面白いのに、大学の科目は普通の観点から点数がつくよな。

俺が普通かどうかやってみないと・・・だけど協力するよ。
なにせ、君は俺の命の恩人だからな。」



「ありがとう。じゃ、私は先に今日のお仕事を片付けてくるね。」



「ああ、失敗したとこと課題を俺なりに考えてやっておくよ。」
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