最後の龍の華②
確かあれは、私が幼少期のとき。
全滅事件から二年前ほどだったかな?




私の父様、当時の龍族の長が傷ついた少年を連れ帰ってきたの。
可笑しいでしょ?長なのに勝手に他族から引っこ抜いて、自分の子供のように接するの、ここの理事長の彗もそうだった。




その少年は、蛇族からやっかみを向けていたらしくて疫病神だとか呪われた子だってずっと言われ続けていたみたい、それに父様が目につけたらしいの。
それが後の白蛇の蚯呀。



性格は大人しくて、でも自分の芯はしっかりして、でも全然自分の心の中を言わないの、そうだなー後はいつも敬語だったの。
今では考えられないけど。
そうそう!
彗も本当は口調が荒々しくて、いつも蚯呀と喧嘩していたの!そんな喧嘩を止めるのは父様で、仲良くしろ!っていつも言われて、しぶしぶ仲良くしてでもそれはお互いに気を許していて。
幼い私はその光景を見るのが好きだったの。




血が繋がってないけど...
家族みたいに暖かくて、喧嘩しても仲直りできるそんなやり取りにずっとこのままって思っていたの。







でも、無理だった。









すべて、私の目の前で壊れていって私はその光景をただ見ているだけだった。
幼少期ということもあって、私の意見だけど....




きっかけは、蚯呀が屋敷にある書庫の奥である本を見てからだと思う。
本当はもっと前からだったからかもしれない、そんな些細な違和感だったの。










〈ねぇねぇ??なんで書庫の奥が見たいの??〉




〈必要な文献を見たかったからですよ〉



〈ふーん。そうなんだ、でも父様に頼めば見れるかもしれないのに...なんで私に頼むの?〉



〈龍華様?〉




〈なーに?蚯呀?〉




〈このことは内密にお願いします〉




〈なーんか、悪いことしてるみたいだね!彗みたいだわ!クスクス〉





〈そうですね、あいつはいつもやらかしますからね〉





〈仲いいんだね!やっぱり彗の隣は蚯呀だね!〉





〈そう言われるのは癪ですが、〉



〈もぅ!素直じゃないなー〉






のんきに笑っていたの、珍しい蚯呀からのお願いに、私は快く応じたの。
それは、書庫にある鍵のかかった部屋でその中には龍族の歴史やながれ。
どういった経由で私達が産まれたのか、龍族の里の秘密やいろんなものが刻まれた文献が所狭しと収めてあるの。







そんな大切な部屋を使えるのは鍵を持つ長と長が許した数人のみであった。
私が使えたのは、悪いことだけど父様の書斎からこっそり取ってきたの。






だって、決めた事それのために全力で成し遂げねばならぬという教えに背くことになる、それは私の中での絶対だったの。






蚯呀が読んでいたのは、"龍族の精霊"という内容の文献だったわ。
それがきっかけ。





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