獅子座流星群




ここはチェーン店ではなく個人で経営しているラーメン屋だ。

スタッフは店長を除けば私しかいない。

普通なら二人しか従業員がいないなんてお店がまわらないだろうが、この店ではラーメンを作る人――――店長がひとりいればクッカーもホールもまわってしまう。


休日の午後19時。

飲食店ならば絶好の稼ぎ時である曜日と時間に、このお店に来るお客様は1人。多い時で3人。


……今も。

先程来た中年男性のお客様が帰ってから、店内はどこか殺伐していた。


「今日も客は全然、か。ごめんね高橋さん」

「べつに店長が謝る理由ないじゃないですか」

「だってさ~。こんな狭くて汚い店で。給料だって安いしさ。小説家さんには申し訳ないよ」


あ~あ、とため息をこぼす店長にカウンターを拭く手を止めた。
小説家。たったそれだけでまぁまぁのお金を貰っていると、この人は思っているのだ。


「今や本が売れない時代ですから。そりゃ有名な方なら違いますけど、殆どの人は小説だけじゃ食べていけず掛け持ちしてるんですよ。アーティストなんかと一緒です」

「んな事言って~。だってよ、高橋さんは新刊出したばっかだし……印税っていうの?そういうのたっぷり貰えるんでしょ?」

「……店長はたった1人でこのラーメン屋を立ち上げたんですもん。凄いと思います」





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