獅子座流星群





『そうだ。5年で芽が出なかったら作家としての道は諦めたほうがいい』

『……え?』

『とりあえず、君は大学生だったね?就活もちゃんとしたほうがいい』

『あ……でも、とりあえず私は小説一本で』

『それは無理だろうな。やめておけ』

『……どうしてですか?』


聞くとその人は困ったように笑ってこう言った。
『それはいつか身に染みて分かるだろう』と。


あれから4年半。小説家として5年目を目前とした今、あの時の言葉の意味がよく分かる。


小説家として食べていける人間なんてほんの一握り。

確かに印税は入る。でもそれは売り上げによって変動する為一定では決してない。


……今回は、百万と少しかな。


1冊の本で百万なら大金と思うかもしれないが、私は今回の作品を約半年かけて完成させた。簡単に言ってしまえば、半年で収入は百万。年収は2百万いくかいかないかだ。

掛け持ちして働かないと生活出来ない金額。それが東京なら尚更だ。


こんな筈じゃなかった――…まさにその通りだ。


新人賞を取った時、世界が変わった気がした。未来は明るいと思ってた。

でも違った。

夢だけじゃご飯は食べれない。
理想だけじゃ暮らしていけない。


それは他でもない――――私自身の責任なんだ。





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