聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
フリードは講義の時のように尊大な態度で腕を組むと、一息に告げた。

「何よりも早急に手を打たれるべきかと存じます。ご即位の際ラミアード王子のご生存が確かでなかったこと、それにより事実上廃嫡となり最後の王族たる陛下に王位継承権が移ったこと、生存が確認されたとあってもあくまでそれは陛下に何事か起こった際の王位継承権第一位として扱われる旨を布告し、広く陛下の王位の正当性を示されるべきでしょう」

「それは………。もう少し、考えさせてください……」

リュティアが思わずそう言うと、二人はそろってためいきをついた。

「女王陛下、肉親の情にほだされていてはなりませんよ」

「臣下として、なるべくお早く、決断を下されることを望みます」

「わかりました………」

ラミアードを押しのけて王位を守るのは辛い。だが王位を譲るわけにもいかない。こうしていつまでも迷っているわけにもいかない。リュティアが頭を抱えたところで、グラヴァウンが口を開いた。

「さらに思わしくないご報告をいたします。東の大国トゥルファンが滅ぼされ、新しく魔月の王国グランディオムが建国されました。その王はなぜか人間の少年で、名をライトファルスというそうです」

「え…………」

リュティアは突然冷水を背中に浴びせられたような心地がした。

「その影響でトゥルファンからの鋼鉄の供給が止まり、値が急激に高騰しています。グランディオムはウルザザードを積極的に攻めていましたが、陛下の聖なる守りの力のおかげで魔月たちが力を発揮できなくなり、今現在グランディオム国内に閉じこもることを余儀なくされている状態だそうです。それから―――」

リュティアはそこから先の報告をまともに聞くことができなかった。

―ライト様が、魔月の王国の王に…。

それはついに彼と戦わなければならない日が近いことを意味していた。

忘れよう、忘れようと努めてきた面影と、向き合わされることを意味していたのだ。
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