聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
リュティアの続く台詞はライトの唇の中に飲み込まれた。
そう、リュティアは口づけされていたのだ。
生まれて初めて、口づけされていたのだ。
時が止まったのではないかと思った。
リュティアは自分が何を言おうとしていたのか忘れた。
自分が何者であるか忘れた。
押し当てられたぬくもりが離れ、かわりに熱い吐息がかかるのを、リュティアは唇で感じた。
「違う…真実(ほんとう)に、お前のことが、好きなんだ…」
それは失恋の痛みに苦しんでいたリュティアにとって、なんと甘く、とまどうばかりの誘惑だったろう。
リュティアはきっと、断固として抗わなければならなかった。彼を突き離し、錫杖の力を用いて攻撃しなければならなかった。だがリュティアにはそれができなかった。
絶句し、瞬きも忘れてライトを見上げる。
熱を帯びたライトの表情に、とまどう。
ライトは右腕でリュティアの体を抱き、左手で頭を抱き寄せ、再びリュティアの唇を奪った。
それは激しい口づけだった。軽く重ねるだけの、物語の中の口づけとは違った。
初恋の相手なのだ。
恋い焦がれたその人なのだ。
どうしてリュティアに、それ以上拒むことができただろう。
ただでさえとまどっていた。
何もかもに混乱していた。
それに生まれて初めての口づけなのだ。リュティアが初めて味わう口づけの感触とそれがもたらす喜びにのまれて、抵抗することはおろか何も考えることすらできなかったとて、誰が責められるだろう。
ライトの唇が、激しく息を盗み、消えない熱さをもたらす。リュティアは頭の中が真っ白になっていくのを感じながら、ゆるゆると瞳を閉じる。体から力が抜ける。さらにライトの腕に力がこもる。深く深く、唇が重ねられる。何度も何度も。
―だめだ、離れなければ…。
―こんなことは許されない…。
理性が告げる。けれど頭の芯がしびれてきて、その理性の声をかき消してしまう。体の奥が熱いのはなぜだろう。涙が溢れてくるのはなぜだろう。
そう、リュティアは口づけされていたのだ。
生まれて初めて、口づけされていたのだ。
時が止まったのではないかと思った。
リュティアは自分が何を言おうとしていたのか忘れた。
自分が何者であるか忘れた。
押し当てられたぬくもりが離れ、かわりに熱い吐息がかかるのを、リュティアは唇で感じた。
「違う…真実(ほんとう)に、お前のことが、好きなんだ…」
それは失恋の痛みに苦しんでいたリュティアにとって、なんと甘く、とまどうばかりの誘惑だったろう。
リュティアはきっと、断固として抗わなければならなかった。彼を突き離し、錫杖の力を用いて攻撃しなければならなかった。だがリュティアにはそれができなかった。
絶句し、瞬きも忘れてライトを見上げる。
熱を帯びたライトの表情に、とまどう。
ライトは右腕でリュティアの体を抱き、左手で頭を抱き寄せ、再びリュティアの唇を奪った。
それは激しい口づけだった。軽く重ねるだけの、物語の中の口づけとは違った。
初恋の相手なのだ。
恋い焦がれたその人なのだ。
どうしてリュティアに、それ以上拒むことができただろう。
ただでさえとまどっていた。
何もかもに混乱していた。
それに生まれて初めての口づけなのだ。リュティアが初めて味わう口づけの感触とそれがもたらす喜びにのまれて、抵抗することはおろか何も考えることすらできなかったとて、誰が責められるだろう。
ライトの唇が、激しく息を盗み、消えない熱さをもたらす。リュティアは頭の中が真っ白になっていくのを感じながら、ゆるゆると瞳を閉じる。体から力が抜ける。さらにライトの腕に力がこもる。深く深く、唇が重ねられる。何度も何度も。
―だめだ、離れなければ…。
―こんなことは許されない…。
理性が告げる。けれど頭の芯がしびれてきて、その理性の声をかき消してしまう。体の奥が熱いのはなぜだろう。涙が溢れてくるのはなぜだろう。