聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
「講義を始める前に、言っておかなければならないことがある。今日、ラミアード派がついに武器をとった。リュティア派の人々が集う本拠地とも言える病院を攻撃している。彼らはラミアードこそが正統な国王であるとして今すぐ女王を退位させよと訴えており、その言上に味方しないリュティア派と争っていたが、武器まで取り出したのは今日が初めてだ」

「―――はい……」

「事はただの子供の喧嘩では済まない事態にまで発展している」

「―――はい……」

険しい顔のフリードに、リュティアは生返事をした。

リュティアの頭は混乱していた。だから何も受け付けることができなかった。

―ライトが私を好きだと言う。私はライトのことがずっと好きだった。それなのにカイは私を花嫁にするという。私は戦わなければならない。誰と? ライトと。でもライトは私を好きだと言った。その言葉は信じられるのか。彼は私を殺したではないか。どうして信じられる。信じたいのか? 彼のことがまだ好きなのか?

「リュティア…?」

―わからない…。あんな口づけを受け入れてしまったということは、好きなのではないのか。でもカイは、こんな私を花嫁にすると言うのだ。夢のような話だ。もったいないことだ。ありがたいことだ。こんなにもカイが好きなのだ、カイを愛しているのだから。ではなぜ、あんな口づけを受け入れた!?

―違う、受け入れたのではない。ただ驚いて―そんなのは言い訳だ! あれはカイへの裏切りではないか。自分でも自分がよくわからないのだ。こんな自分を、なぜカイは花嫁にするなどと言うのだろう。なぜ――

「……フリード先生……」

ぽつりと、リュティアは呟く。

うつむいたその視線は、ぼんやりと焦点が合っていない。

「…愛とはなんですか。恋と、同じものではないのですか…」

「………??」

「確かに誰かを愛しているのに、恋した人の求愛を断固として断れなかったのは、罪でしょうか……」
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