聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
リュティアの出した布告により、内乱は収束を見た。

人々は武器をおさめ、固唾を呑んで待つことにした。聖山レヌスでの試練の結末を。

「…気をつけて、ラミアードお兄様」

リュティアがラミアードの手を両手で包みこむように握り、心から心配そうに見上げてくる。そんなリュティアをラミアードは心から愛しいと思う。

「大丈夫、そんなに心配するな」

「でも……」

手を取り合い見つめ合う二人の間に、深い信頼と愛情があるのは傍目にも明らかだったろう。国民が自分たち二人を見習ったなら、こうして王を決める試練を行う必要もなかったのかも知れない、とラミアードは思う。

「カイ……」

リュティアがラミアードの手を離し、隣で旅装を整え佇んでいるカイに視線を移す。

さすがの自分たちもこの二人の間にあるものには到底敵わないなと、ラミアードは微笑ましく思う。

二人はどうせ気づいていないのだろうが、彼らの間には到底言葉では表せないような甘くどこか切ないような空気が流れている。何かあったのは間違いないが、直接尋ねるような無粋な真似を、ラミアードは避けた。

「カイも、どうか気をつけて。お兄様を守ってさしあげてください」

「…わかった。では、行ってくる」
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