聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
聖山レヌスまでは、馬で半日の距離を行く。
コルディレラ山系からとびだした単独の山であるこの山は都からほど近いが、聖山ゆえに普段何人も立ち入ることを禁じられている。
その姿は、都に住む人々から常に尊敬のまなざしで見られている。
ラミアードとカイの二人は普段景色の一部として見えていたレヌスが近づくにつれ、なぜこの山が聖山と呼ばれ敬われてきたのかがわかったような気がしていた。
それほどその山は美しかった。
四本の鋭い剣が上向きに並んだような切り立つ断崖が描き出す猛々しい稜線。それは頂きのあたりが天人の薄衣のようにまとう霧とあいまって、見る者に圧倒的なスケールの大きさを感じさせる。山のところどころを彩る純白の輝きはおそらく雪であろう。この常春の気候の国においてそれはありうべからざることであり、そのことがまたこの山の秘める不思議な力を思わせる。
見上げても頂きが見えないほどレヌスが近づいたところで道は鬱蒼とした林に差し掛かり、二人はそこで馬を下りた。林を一刻ほど行くと、レヌスへの入口が見えてきた。
上へ上へと急勾配で続く細い山道のたもとには鉄の柵があり、レヌスを飾る白い雪を思わせる白い建物が、関所のように柵の左右に建っていた。
二人の足音が聞こえたのだろうか、建物の中からいかめしい大男がのっそりと姿を現した。
「これより先は神聖なる領域。王の試練を受ける者のみが入山できる」
彼はこの山の守り人なのだろう。彼の逞しい体躯と手にした大ナタを見れば、ここを強行突破することの難しさを思わずにはいられない。
ラミアードはマントを飾る王家の紋章を示しながら名乗った。
「私はこの国の王子ラミアード。王の試練を受けにきた。そこを通していただきたい」
「かしこまりました」
大男は鉄柵にとりつけたカギを重々しい仕草で取り外した。
軋んだ音を立てて鉄柵は左右に開いた。
「王の宝を目指すのであれば、頂上を目指してください。どうかお気をつけて」
「ありがとう」
カイが当然のようにラミアードのあとに続こうとすると、大男が突然二人の間に立ちはだかった。
「王の試練を受ける者しか、入山はできない」
カイは困ってしまった。
コルディレラ山系からとびだした単独の山であるこの山は都からほど近いが、聖山ゆえに普段何人も立ち入ることを禁じられている。
その姿は、都に住む人々から常に尊敬のまなざしで見られている。
ラミアードとカイの二人は普段景色の一部として見えていたレヌスが近づくにつれ、なぜこの山が聖山と呼ばれ敬われてきたのかがわかったような気がしていた。
それほどその山は美しかった。
四本の鋭い剣が上向きに並んだような切り立つ断崖が描き出す猛々しい稜線。それは頂きのあたりが天人の薄衣のようにまとう霧とあいまって、見る者に圧倒的なスケールの大きさを感じさせる。山のところどころを彩る純白の輝きはおそらく雪であろう。この常春の気候の国においてそれはありうべからざることであり、そのことがまたこの山の秘める不思議な力を思わせる。
見上げても頂きが見えないほどレヌスが近づいたところで道は鬱蒼とした林に差し掛かり、二人はそこで馬を下りた。林を一刻ほど行くと、レヌスへの入口が見えてきた。
上へ上へと急勾配で続く細い山道のたもとには鉄の柵があり、レヌスを飾る白い雪を思わせる白い建物が、関所のように柵の左右に建っていた。
二人の足音が聞こえたのだろうか、建物の中からいかめしい大男がのっそりと姿を現した。
「これより先は神聖なる領域。王の試練を受ける者のみが入山できる」
彼はこの山の守り人なのだろう。彼の逞しい体躯と手にした大ナタを見れば、ここを強行突破することの難しさを思わずにはいられない。
ラミアードはマントを飾る王家の紋章を示しながら名乗った。
「私はこの国の王子ラミアード。王の試練を受けにきた。そこを通していただきたい」
「かしこまりました」
大男は鉄柵にとりつけたカギを重々しい仕草で取り外した。
軋んだ音を立てて鉄柵は左右に開いた。
「王の宝を目指すのであれば、頂上を目指してください。どうかお気をつけて」
「ありがとう」
カイが当然のようにラミアードのあとに続こうとすると、大男が突然二人の間に立ちはだかった。
「王の試練を受ける者しか、入山はできない」
カイは困ってしまった。