聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
ラミアードは戦法を変えざるを得なかった。彼は土煙を立てて立ち止まると、振り返って剣をふるった。

ぐにゃりとした妙な手ごたえに、ラミアードは戦慄した。

―なんだ…!?

剣は確かにヴァイオレットに斬りつけたはずなのに、血の一滴も噴出さない。それどころか、体にめりこんだ剣がどうしてか引き抜けない…!

「くそ…!」

「殿下! こいつに剣は効きません!」

思わず剣から手を離してしまったラミアードのすぐそばを、唸りを上げてカイの矢が飛来する。それは正確にヴァイオレットの眉間を貫いていた。カイの弓の腕前にはいまさらながら舌を巻く。

しかし――

ヴァイオレットは眉間に矢を突き立たせたまま、不気味に薄笑いを浮かべていた。

「無駄ですよ、私の体には内臓がない、もちろん脳もない、美しくないものはないのだと、一度申しあげたでしょう」

―なんだって!?

ラミアードは混乱した。

内臓がない、では弱点はないということだろうか。いったいどうやって仕留めればいいという!?

ヴァイオレットは眉間に突き立った矢を、翼を器用に使って引き抜く。その一瞬を狙い、ラミアードは自分の剣を勢いよく引き抜きなんとか取り戻した。

―探せ!

―必ずあるはずだ。どこかに、弱点が…

そのためには石化光線をかわしながら牽制し、相手をよく観察しなければならない。わかっていたが、それはたやすいことではなかった。

至近距離で放たれた石化光線を飛び退ってかわしたものの、光線に取り戻したばかりの剣を貫かれてしまった。

頼みの剣が石化し、ぼろぼろと崩れていくのを、ラミアードはなすすべもなく見守る。
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