聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
「殿下! 危ない!」
突然すぐ耳元でカイの声が聞こえ、強い力に体を跳ね飛ばされていた。容赦なく襲いかかってきた次の石化光線から、カイが全身でかばったのだ。
しかしカイの捨て身の行動をもってしても、完全に石化光線を免れることはできなかった。
「「うああああっ!!」」
二人は同時に悲鳴をあげた。ラミアードの左手と、カイの腰のあたりを、石化光線は貫いていた。
ラミアードは突き飛ばされた衝撃で地面を転がりながら、ヴァイオレットを観察した。どこか冷静に観察した。この冷静さが彼が王にふさわしいと言われる所以であった。こんな状況でも次に打つ手を考えられるほど、彼の心は訓練を受けていた。
―探せ、探すんだ。
―必ずどこかに、弱点はあるはず…!
その時彼は、鋭い観察眼でヴァイオレットの左翼に妙なものをみつけた。
それは美しくしなやかな羽根の中に一枚だけまざっている、いかにもぼろぼろでみすぼらしい羽根だった。
ラミアードの直感が囁く。あれだと。
「カイ! 左翼に一枚だけ美しくない羽根がある! 弓でそれを狙え!!」
ラミアードの叫びに、ヴァイオレットが一瞬表情を変えた。それは明らかに焦りの色を濃く宿した表情だった。おそらく無意識だろう、ヴァイオレットはぼろの羽をかばうように翼をわずかにたたむ。それで確信した。
「…わかりました!!」
カイがすぐさま矢を放ったが、ぼろの羽をわずかに逸れ、吸い込まれる。ヴァイオレットに隙がないのだ。俊敏に動かれ、かわされてしまう。
―もう一度だけでいい、隙をつくれれば…。
ラミアードは思った。一瞬でも隙をつくることさえできたら、カイなら絶対にあの羽根を狙って見事に射ぬくことができる。
それは信頼と呼べるものだったのかもしれない。
何よりも強い、信頼と呼べるものだったのだろう。
ラミアードは賭けた。カイに賭けた。
突然すぐ耳元でカイの声が聞こえ、強い力に体を跳ね飛ばされていた。容赦なく襲いかかってきた次の石化光線から、カイが全身でかばったのだ。
しかしカイの捨て身の行動をもってしても、完全に石化光線を免れることはできなかった。
「「うああああっ!!」」
二人は同時に悲鳴をあげた。ラミアードの左手と、カイの腰のあたりを、石化光線は貫いていた。
ラミアードは突き飛ばされた衝撃で地面を転がりながら、ヴァイオレットを観察した。どこか冷静に観察した。この冷静さが彼が王にふさわしいと言われる所以であった。こんな状況でも次に打つ手を考えられるほど、彼の心は訓練を受けていた。
―探せ、探すんだ。
―必ずどこかに、弱点はあるはず…!
その時彼は、鋭い観察眼でヴァイオレットの左翼に妙なものをみつけた。
それは美しくしなやかな羽根の中に一枚だけまざっている、いかにもぼろぼろでみすぼらしい羽根だった。
ラミアードの直感が囁く。あれだと。
「カイ! 左翼に一枚だけ美しくない羽根がある! 弓でそれを狙え!!」
ラミアードの叫びに、ヴァイオレットが一瞬表情を変えた。それは明らかに焦りの色を濃く宿した表情だった。おそらく無意識だろう、ヴァイオレットはぼろの羽をかばうように翼をわずかにたたむ。それで確信した。
「…わかりました!!」
カイがすぐさま矢を放ったが、ぼろの羽をわずかに逸れ、吸い込まれる。ヴァイオレットに隙がないのだ。俊敏に動かれ、かわされてしまう。
―もう一度だけでいい、隙をつくれれば…。
ラミアードは思った。一瞬でも隙をつくることさえできたら、カイなら絶対にあの羽根を狙って見事に射ぬくことができる。
それは信頼と呼べるものだったのかもしれない。
何よりも強い、信頼と呼べるものだったのだろう。
ラミアードは賭けた。カイに賭けた。