聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
『僕とセラフィム様はここでプリラヴィツェを守るよ。リュティアお姉さん、がんばってね』

フューリィの応援を背に、リュティア達はフローテュリア目指して旅立った。

行く先々で奇跡の力を示し地道に王国に人を集めた。

夜から明けない異常事態に恐慌状態に陥っていた多くの人々にとって、聖乙女リュティアの存在は希望だった。

聖なる王国を目指して、人々の大移動が始まった。

ヴァルラムにつくと、国王からすでに約束どおり移住を希望する大勢の人をまとめ、皆でフローテュリア王都の修復を始めていると聞いたが、リュティアは信じられずにいた。

王国滅亡の記憶はまだ胸に生々しかったからだ。

しかし――

懐かしい王都のそばである光景を見た時、リュティアはやっと信じた。信じることができた。

彼女の瞳に映った光景。それは、純白の花スノードロップが一面に花開いている光景だった。

焼け落ちたはずの家屋がつぎはぎされながらも修復され軒を並べている光景も確かにすばらしかった。しかし何よりもリュティアの心を打ったのは、この一面のスノードロップだった。

かつて永久なる花園と呼ばれし王国フローテュリア。

その“再生”に、これほどふさわしい光景があっただろうか。
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