聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
離さなければいけないとわかっていた。

こんなことは許されないとわかっていた。

リュティアだって困っていると思った。しかし、次リュティアの唇からこぼれた言葉は、カイの想像を絶するものだった。

「違います…カイ…離せなんて、言いません…もう少し、このまま………」

「!!?」

―リュティアは何を言っている!?

カイは瞬時に頬を染めると、慌ててリュティアの体を離した。そんなカイに、リュティアは唇をわずかに持ち上げて苦笑を見せた。

「カイ…ずいぶん遅くなってしまいましたが、あの時のお返事を、させてください…」

ついに来たかとカイは我知らず身を固くした。

あの日告白してしまったことを、後悔はしていなかった。しかし、カイはこの数か月無意識にリュティアと二人きりになるのを避けて過ごしていた。それは彼女が女王となるまで目の回るような忙しさだったせいだと思っていたが、今こうしてリュティアと向き合えばやはり怖かったのだとわかった。

もしも拒絶されたら二人の間にあった絆は壊れてしまうのだろうかと、怖かったのだ。

けれどどこかに淡い期待があったのも事実だ。リュティアの些細な言葉に、まなざしに、ひょっとしたらと期待していた。

今すべての結果が出る…。

カイは唇を引き結び、覚悟を決めた。
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