聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
「ずっと考えていました…。あの時愛していると言ってくれたのは、どういう意味なのかなって」

―どういう意味? それは……

何か強烈な引力にひきつけられるように、カイは手を伸ばしてリュティアの髪に触れる。すると激しい恋しさがこみあげてくる。こみあげる恋しさのままに、カイは吐息と共にかすれた声を押し出す。

「こういう意味だ」

言ってしまってからカイは自分の大胆さに恥じらいわずかにうつむいたが、髪に触れた手は引っ込めなかった。

それがカイの意思の表れだった。

ちゃんと自分の気持ちを知ってほしかった。

受け止めてほしかった。

その真剣な気持ちはリュティアに余すところなく伝わったらしく、リュティアの頬にぱっと朱が散ったのがわかった。

「ええと、その……」

そのままうつむく仕草はあまりにも可憐で、カイの鼓動は早鐘を打つ。

「きっとそうなんだなって思ったら、私…驚いて…でも、嬉しかった。ずっと私を見ていてくれたんだと思うと、嬉しかったのです…」

もうカイの胸に怖さはなかった。訥々(とつとつ)と自分の気持ちを語る彼女がひたすらに愛しかった。一言も聞きもらすまいと思った。

「でも」

リュティアの瞳が悲しみのかげりを帯びた。

「私には好きな人がいました」

カイは鋭い胸の痛みと共に、知っていると思った。そのことについては誰よりもよく知っている。きっとリュティア本人よりも。
< 52 / 141 >

この作品をシェア

pagetop