聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~

果てしなく広がる青空の下地の上、美しい陰影を刻む白い雲の隙間から、光輝く太陽が顔を出す。まばゆい日差しはどこまでも続く白い花畑と耕された土の畝の波を照らし、ところどころ雲の影をくっきりと浮かび上がらせる。

そんな美しくも牧歌的な風景の中、三騎の馬影が土埃をたてて走りゆく。

「それにしても驚いたな。パール、お前、馬に乗れたのか」

アクスの野太い声を、リュティアは同じ馬の背に揺られながら間近で聞いた。

「当然だよ。僕は良馬の産地ヴァルラムの生粋の王子様なんだからね」

しれっとそう答えるパールは一人で馬上にあり、すばらしく姿勢がいい。

馬に乗るということ自体にまだ慣れないので、リュティアは緊張感を持って馬の背に取り付けられた乗馬補助の金具につかまっている。

手綱こそ後ろから伸びるアクスの逞しい腕が握っているが、正面を向いて座っていられるのは、今日のリュティアのいでたちが太ももまで切り込みの入った生成りの長いローブにズボンという身軽なものだからだ。

リュティアだけではない。黒馬で前を行くカイも、鹿毛をあやつる隣のパールも後ろのアクスも、皆が似たり寄ったりの身軽な服装に身を包んでいる。これから農作業の手伝いに行くからである。

「ウマの扱いがウマいんだな」

アクスがにやりと笑ったことが声でわかる。

パールもまたにやりとその頬を弛める。

「ウー、マいったな、そんなに褒められると。よっと!」

パールが見事に手綱をさばき、馬を走らせ二度躍るように跳躍してみせる。

「ホー、スごいな」

とうとう、リュティアとカイが噴き出した。

弾けるように笑いながら、二人声を揃える。「ウマイ!」
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