聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
リュティアの私室の広いテラスには大理石の豪華なテーブルセットが設えられている。

ラミアードとリュティアの二人はそこに腰掛け、侍女とっておきの茶葉でいれた紅茶と焼き菓子をゆっくりと楽しんでいた。

「幻の花サンテギウスは見せてあげられなかったけれど、そうか、本当に色々なものを見てきたんだね、リュー」

リュティアの旅の話をひととおり聞き終えたラミアードは、洗練された所作で紅茶のカップを置き、不意に手を伸ばしてリュティアの頭を撫でた。

「よくがんばった…辛かったろう」

平和だった頃そのままのラミアードにそう言われると、リュティアは旅の辛い思い出が蘇ってきてまたしても泣きたくなってしまう。

「はい…はい、お兄様…でも」

リュティアはまだ眉を曇らせたまま、唇だけで微笑んだ。

「どんなに辛い時も、カイがそばにいてくれました。いつも私を見守っていてくれました。今もずっとそばで私を助けてくれています」

「カイには礼を言わなければならないな」

「礼などいくら言っても言い足りないくらいです。今はただただ、カイの気持ちがありがたくて…………あ」

リュティアは慌てて唇をおさえた。失言だった。聡明なラミアードだ、すぐにその言葉の意味に気づき、驚いたように漆黒の瞳を見開く。
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