聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
ラミアード王子の帰還は王国中にどよめきを巻き起こした。

フローテュリアで生まれ育った者で、聡明で知られたかつての王太子を知らぬ者はいない。

彼はリュティアの兄なのだ。長子相続を基本とし男系で受け継がれてきたフローテュリア王位だけに、今すぐラミアードを国王とすべきであるとの声があがった。このラミアード派の人々は、宝剣アヌスがこの時期に消えたのは新たな王を戴くためであると声高に主張した。

その一方で引き続きリュティアを女王とすべきであるとの声も多数あがった。女王の人となりに惚れ込んだ人々だ。

王国内は割れ始めていた。

ラミアードの存在は、平らかに治まっていた王国に投げかけられた、無視できないほど大きな波紋だった。
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