聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
「本当にお兄様は王にふさわしいお方です……私などよりずっと」

冬蛍の舞う泉のほとりで、リュティアは長いため息をついた。

夜闇に白く浮かぶ泉も美しいが、蛍の明かりを受けたリュティアの横顔ときたら美しすぎてまるで妖精の女王のようだ、とカイは思った。

こんな場所に夜、二人きりでいるという事実が、カイの胸をどうしようもなく高鳴らせる。いや、それだけではない。

今日、ラミアードに教えてもらったこの場所にリュティアを連れ出したのには特別な理由があった。そのことを思うとカイはもう、どきどきせずにはいられないのだ。

「リュー、何を悩む必要がある? 戦いが終わったら、殿下に王位を譲ればいい」

「………………そうですね……」

リュティアの返事は歯切れが悪い。その迷いを振り切らせたくて、カイは意を決し、うつむくリュティアの両肩をつかんで自分の方を向かせた。

「リュー…王位を譲ることがどんなに大切なことか、わからないのか? お前が女王でなくなったら、私は、お前を………」

「…?」

―“花嫁にするつもりだ”。

その一言を言うために、カイは呼吸を整える。
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