聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
『館に火をかけたのは私です。真実を知るためなら私はなんだってできる。正直に答えなければ、あなたを殺します、ユーリア』

カイは見た。

やっとたどりついた一室で、ラミアードは母ユーリアに剣を向けていた。

母は剣に怯みもせず、叫んだ。

『神にかけて、あの子は、カイは、私の息子です!!』

そして母は自ら勢いよく剣に身を投げた…。

母の胸に吸い込まれた白刃のきらめき。それはカイの胸に消えない恐怖を刻んだ。

カイは悟る。自分が剣を苦手とした理由を。だがそんなことはもはやどうでもよい。

―おかしいのだ。おかしいではないか。なぜ母は死の間際、あんなことを叫んだ…!?

カイの全身に嫌な汗が噴き出す。

体がぶるぶると震え始める。

「あの頃、私は偶然ある噂を耳にした。それは私が家族の誰にも似ていないという、よくある噂話だった。私は彼らを笑い飛ばしてやるために、秘密裏に当時の人々から情報を集めた。そして…知ってしまったんだ」

―やめろ! それ以上言うな!

カイは叫びだしたい気分だった。本当に叫び出せたらどれだけよかったろう。しかし実際はカイの声は喉の奥の方で詰まり、声にならない。

「私は生まれたばかりの頃は体が弱かったから、お披露目式に同じ頃生まれたじょうぶな赤ん坊を替え玉としたという。そして侍女の不手際で、どちらがどちらか、わからなくなってしまったというんだ…」

―聞きたくない!

耳をふさげたらどれだけよかったろう。しかしカイの腕は固まりぴくりとも動かない。ただ震える。
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