聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
カイの耳に、ラミアードは淡々と、感情を押し殺した声で聞かせる。
「カイ、お前の母ユーリアの髪は、陽に透かすと蒼く見えるな。どうだ、私にそっくりじゃないか」
「そんなのは珍しくもない!! 他にもいくらでもいる! 偶然だ!!」
カイの喉からやっと声が押し出された。それは敬語も何もない、歯に衣着せぬ少年時代そのままの口調での、血を吐くような叫びだった。
ラミアードはカイの方を見上げ、ふっと微笑んだ。それはいつものあたたかい笑みではなく、自嘲気味の薄い笑いだった。
「ああそうだ。偶然かも知れない。本当のところは誰にもわからないと私も思った。お前の母は、間違いなくお前が自分の息子だと証立てるために、命さえ捨てた。だから私はこのことを忘れようと思った。お前にも忘れてもらうことにした」
「忘れる。忘れればいい。それでいい、それでいいじゃないか!」
「だがあの日―フローテュリアが陥落したあの日、私は思い出してしまったんだよカイ。真実を明らかにする方法がひとつだけあったことを…」
真実など知らなくていい。知らなくていいのに、カイはひきつけられるように尋ねてしまう。
「それはいったい…?」
ラミアードはその漆黒の双眸を長い睫毛の中に隠し、眉根を寄せて言った。
「宝剣アヌスだ」
「……?」
「カイ、お前は知らないだろうが、宝剣アヌスは王族の剣。フローテュリアの王族以外は、触れることすらできない剣なんだ。それなのにフローテュリア陥落の日お前はどうした?」
「……………」
カイの顔からみるみるうちに血の気が引いていく。
カイはよろめく。―立っていられない…!
「お前はやすやすとあの剣を運んできた。あの日、私は思い知ったんだ」
続くラミアードの言葉を、カイは冷たい針で全身を刺し貫かれるような痛みと共に聞いた。
「カイ。お前がフローテュリアの真実(ほんとう)の王子なんだ。リュティアはお前の、…実の妹だ」
「カイ、お前の母ユーリアの髪は、陽に透かすと蒼く見えるな。どうだ、私にそっくりじゃないか」
「そんなのは珍しくもない!! 他にもいくらでもいる! 偶然だ!!」
カイの喉からやっと声が押し出された。それは敬語も何もない、歯に衣着せぬ少年時代そのままの口調での、血を吐くような叫びだった。
ラミアードはカイの方を見上げ、ふっと微笑んだ。それはいつものあたたかい笑みではなく、自嘲気味の薄い笑いだった。
「ああそうだ。偶然かも知れない。本当のところは誰にもわからないと私も思った。お前の母は、間違いなくお前が自分の息子だと証立てるために、命さえ捨てた。だから私はこのことを忘れようと思った。お前にも忘れてもらうことにした」
「忘れる。忘れればいい。それでいい、それでいいじゃないか!」
「だがあの日―フローテュリアが陥落したあの日、私は思い出してしまったんだよカイ。真実を明らかにする方法がひとつだけあったことを…」
真実など知らなくていい。知らなくていいのに、カイはひきつけられるように尋ねてしまう。
「それはいったい…?」
ラミアードはその漆黒の双眸を長い睫毛の中に隠し、眉根を寄せて言った。
「宝剣アヌスだ」
「……?」
「カイ、お前は知らないだろうが、宝剣アヌスは王族の剣。フローテュリアの王族以外は、触れることすらできない剣なんだ。それなのにフローテュリア陥落の日お前はどうした?」
「……………」
カイの顔からみるみるうちに血の気が引いていく。
カイはよろめく。―立っていられない…!
「お前はやすやすとあの剣を運んできた。あの日、私は思い知ったんだ」
続くラミアードの言葉を、カイは冷たい針で全身を刺し貫かれるような痛みと共に聞いた。
「カイ。お前がフローテュリアの真実(ほんとう)の王子なんだ。リュティアはお前の、…実の妹だ」