泣き虫王子と哀願少女
ガタンッ!
「な、何……これ……」
夢にも思わなかった内容に、思わずその場に立ち上がり凍りつく。
「静かに!」
「あ……」
カウンターから飛んできた司書さんからの叱責に「すみません」と消え入るような声で返事をし、ゆっくりと席に着き直す。
今まで一度もイジメなどにあったことがない私は、直接自分に対する悪口を肌で感じるのは今回が初めてだった。
あまりのショックに指先の震えが止まらない。
自分でも顔からスーッと血の気が引いていくのがわかった。
「下駄箱に入ってた。どうせくだらない奴らがやった遊び半分の嫌がらせだろ? あんま気にすんな」
「う、うん……」
返事はかえすものの、赤い文字から一向に視線を外すことができない。
その様子を見ていた潤君が
「こんなもん捨てちまうにかぎる」
「あっ……!」
ビリッビリッ
私の手からヒョイと紙片を取り上げ、不機嫌そうに乱雑に破いてしまったのだった。