泣き虫王子と哀願少女
「あ…。あ……! あ~っ!!」
「!?!?」
私の叫び声にクラス中の視線が一斉に集中する。
「し、雫! しーっだよ!」
「う、うん! ごめん」
先程とは反対に、今度は明里から注意されてしまった。
居住まいを正し、改めて他の人に聞こえないよう声のボリュームに気を付けながら小声で明里に囁く。
「どうしよ明里!」
「?」
「私の本当のテスト順位、潤君にバレちゃった~!しかも100番以上もサバ読んで嘘ついたことまでバレてるし~……」
「絶対大バカ女だと思われてる……」と嘆く私の肩を、明里が両手でガシッとつかむ。
「雫、大丈夫! 今の世の中おバカタレントが愛される時代よ? 水沢君はきっとあんたのこと『バカで可愛い♪』とか思ってるよ!」
「バカで可愛い~!?」
「うんうん!」
フォローになってないフォローをした明里が、いいこと言ったと言わんばかりに得意げに頷いている。
気が抜けてしまった私は「あはは。そうかもね」と適当に明里に話を合わせ、食べ終わったお弁当箱をしまおうとした。……が、その瞬間 ――
「!?」
突然背後からゾクリとする鋭い視線を感じたのだった。