泣き虫王子と哀願少女
「で、しっずくちゃんは夏休みに水沢君と何か進展はあったのかな~?」
「進展!?」
クフフ、と含み笑いをしながら意味ありげな視線を向けてくる。
「残念でした! 潤君、新潟にあるおじいさん家の民宿を手伝いに夏休み中ずっと向こうに行ってたの!」
「え~っ!? せっかく距離を縮めるチャンスだったのに~? つまんな~い!」
「つまんないって遊びじゃないんだから……」
「む~……!」
唇を尖らせプーっと頬を膨らませながら、ふと思い出したかのように明里が口を開いた。
「そういえばその後、なんか嫌がらせとかあった?」
「ううん、結局あれだけ。心配し過ぎだったのかなぁ?」
「そっか! まぁ、何もないにこしたことないんだからよかったじゃん!」
「うん。そうだよね」
互いに顔を見合わせながら、よかったねと微笑む。
「おっと! んじゃ、私今日日直だから職員室寄ってから教室行くね~」
「うん。また教室でね」
「2学期早々日直なんてツイてないや」と、足早にかけて行く明里の背中を見送り、私も教室へと向かったのだった。