泣き虫王子と哀願少女
―― パチッ!
照明が消され、カーテンで陽の光をさえぎられた体育館に暗闇がおとずれる。
どうせ見たって私ひとり泣けないんだから、このまま寝ちゃおっかな……。
憂鬱な面持ちでそんなことを考えていたとき、ふと、昨日映画館で出会った男性のことを思い出した。
「私もあんな風に泣けたらいいのに……」
あんなにもイケメンでカッコイイ男性までもが泣けるのだと思うと、一滴の涙も流せない自分がなんだかすごく情けなく思えた……。