泣き虫王子と哀願少女


「コーヒー……ですか?」

「おう。コーヒー嫌いか?」

「いえ、嫌いじゃないですけど……」

「よし! じゃぁ決まり!」

「えっ!?」



半ば強引に決められ近くにあったイスに座らされる。


怪訝そうな私をよそに、須藤先生はウキウキと電気ポットのお湯をカップに注いでいた。



「あの……、他の先生方は……」



居心地が悪くてとりあえず思いついたことを口にしてみる。



「あぁ、他の先生は職員室の方がいいらしくて、俺以外の数学の先生はあんまココ出入りしないんだよ」

「へぇ……、そうなんですか」

「教室棟から離れた別棟の管理棟だしね」



心持ち寂しそうにも見える表情で苦笑混じりに先生が呟く。




それからしばらくすると「ほらよ」と、先生が赤いチェック柄のマグカップを私に差し出してきた。

< 119 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop