泣き虫王子と哀願少女
「コーヒー……ですか?」
「おう。コーヒー嫌いか?」
「いえ、嫌いじゃないですけど……」
「よし! じゃぁ決まり!」
「えっ!?」
半ば強引に決められ近くにあったイスに座らされる。
怪訝そうな私をよそに、須藤先生はウキウキと電気ポットのお湯をカップに注いでいた。
「あの……、他の先生方は……」
居心地が悪くてとりあえず思いついたことを口にしてみる。
「あぁ、他の先生は職員室の方がいいらしくて、俺以外の数学の先生はあんまココ出入りしないんだよ」
「へぇ……、そうなんですか」
「教室棟から離れた別棟の管理棟だしね」
心持ち寂しそうにも見える表情で苦笑混じりに先生が呟く。
それからしばらくすると「ほらよ」と、先生が赤いチェック柄のマグカップを私に差し出してきた。