泣き虫王子と哀願少女
「ありがとうございます」
「インスタントだけど、なかなかイケるんだぜ」
気を遣ってくれたのか、ミルクもたっぷり入っている。
ホンワリと漂う湯気に鼻先を近付けると、砂糖も入れてくれたのか、甘くて香ばしい香りがした。
「いい匂い……!」
「だろ? 熱いから気を付けて飲めよ」
「はい」
フーフーと息を吹きかけて冷ましながらひとくち口に含む。
「! 美味しいっ」
「だろ? 俺の淹れるコーヒーは最高だからな!」
褒められたのが余程嬉しかったのか、先生が子どもみたいなやんちゃな笑顔を浮かべ自慢げに頷いた。